耐震補強工事は補強が必要な壁にピンポイントで行う工事です。既存壁を解体し、壁内に耐震パネルを設置して既存と同様の仕上げをすれば完了します。悩ましいのは補強すべき壁が和室にある場合。和室の壁は左官仕上げの場合が多く、揺れに対して敏感だからです。
耐震補強実例(和室真壁補強~内装復旧)
地震に備えるために壁を補強するわけですが、求められるのは強度だけではありません。余震に対する持続的抵抗力を発揮する為、柔軟性も求められるのです。その為耐震パネルは、壁一面を強度の高いボード一枚で補強するのではなく、上・中・下と3分割し、揺れに対してそれぞれが柔軟に変位することによって地震力をいなし吸収する構造になっています。
耐震補強実例(和室真壁補強~内装復旧)
これが、上・中・下と三つのボードで構成された耐震パネル全景です。前回も言いましたが、この3層のボードで、地震発生時にお互いが左右にずれて地震力を吸収します。ここで問題になるのが、和室の壁仕上げ材(ジュラク・漆喰・珪藻土など)です。和室の壁を左官で仕上げる場合、納まり上この耐震パネルに直接左官材料を塗りますが、工事完了後に、ある程度の規模の地震が発生すると、それぞれのボードの接合部にクラック(ひび割れ)が発生するケースがあるのです。
耐震補強実例(和室真壁補強~内装復旧)
そのクラックを最小限にすべく、ボードの継ぎ目に特殊なファイバーテープを貼って補強するのですが、限界があるのです。どうしても許容できない場合は、仕上げ材を検討する、あるいは、同時リフォームで洋室に改装するなど、回避する方法を考えなければなりません。
耐震補強実例(和室真壁補強~内装復旧)
こちらのお宅は、和室の風合いがそのままであれば多少のクラックは容認可能とのことで、既存のじゅらく壁と色合わせをし、元通りに左官工事で仕上げました。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!