前回ご紹介した耐震パネルは筋交いより高性能だとお解り頂けたと思いますが、実はそのパネルでも巨大な地震動が繰り返し発生(余震)した場合には強度的に不安がでてきます。ではなぜその不安が出てくるのか?そしてその対策とは?。
耐震(剛補強)の考え方
前回ご紹介した耐震パネル(上中下3分割された)とは異なりますが、わかり易くする為一枚のパネルで考えてみましょう。
地震時には図(木耐協資料引用)のように壁は変形します。パネルを留付けている釘やビスなどが少しずつ曲がったり、抜けだしたりしながら地震の揺れに抵抗し耐えようとするのです。よって弱い地震動では釘やビスの変形・抜け出しもある程度抑えられ、力を発揮し続けられますが、巨大地震ではそれも不可能となり耐震パネルの強度は落ちてしまいます。
制震(柔)の考え方
では、強度低下をまねく釘やビスの変形・抜け出しの要因が前図のような過度な変形により起こるのであれば、変形量を抑えれば強度が温存できるということで図のような制震壁(装置)が考えだされました。筋交いような形もあれば4隅に設置するタイプなど形はいろいろありますが、共通しているのは高減衰ゴムを用いて地震力を吸収(動的エネルギーを熱エネルギーに変換)する事です。これにより変形量を抑える(制震壁(装置)の設置量や方向を計算によって変形量を調整可能)ことが可能となりました。高層ビルや安全を必要とする建物等にも同じような考え方の装置が採用されています。
制震装置実施工例
写真は一般の木造住宅に採用した例(前図左側のタイプ)です。
この制震装置(製品名:TRCダンパー)は施工の都合上、床と天井を解体・復旧する必要があり、前回紹介した耐震パネルに比べコスト高(単独工事の場合25万円/箇所~)となりますので、床・壁・天井を解体復旧するスケルトンリフォームをお考えの方にとっては床・天井解体・復旧費用が相殺されお勧めです。
また、耐震補強工事のみを検討される場合であっても、強度低下を防ぎ、かつ一般的な筋交補強(45×90)と同等の強度を有し強度計算にも算入できるこの制震装置こそ、熊本地震ように繰り返し襲ってくる強い余震に不安を感じてられる方には是非採用をお勧めします。
参考までに、この住宅には計算に基づいて、1階のみ適所に東西方向2ヶ所、南北方向に2ヶ所計4ヶ所設置し変形量を両方向共1/2以下に抑えました。費用は内装復旧費用と基礎補強費用別途で1箇所当たりのコストは約20でした。
結局のところ地震対策としては、建て直す以外では耐震+制震リフォームが一番安心できる方法のようですが、その前に是非、耐震診断&インスペクションをご検討下さいね。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!