現在の国の基準では建物の外装材の落下防止の為、建物に一定の基準の変形量(層間変形角)なるものを規定しています。外装(外壁)材は固く重い為、落下による被害をなくす為の考え方です。ところが・・・
外壁が下地から剥離していたら?
築40前後の住宅の外壁は、安価で防火性能が高く施工性が良いため木ズリ板にフェルト・ラス網を張りそこにモルタルを塗る仕上げが多用されて来ました。ところがこのモルタル壁は塩分を多く含んだ砂の使用でラス網を錆びさせ著しい付着強度の低下や、塗り厚不足等の問題から簡単にクラックが入り雨水が侵入しさらに腐食が進行し、剥離落下を招く結果となったのです。また旧耐震の木造の家はサブタイトルの層間変形角も大きい為、余計に剥離し易いのです。
ここまで来たら、塗替えるしかありません。
剥離落下したモルタル壁の内側です。完全にラス網が錆びていますね。このラス網に本来は番線(針金)を用い一定の間隔で補強するのが一般的なのですが、このお宅はその施工はされていませんでした。そこへ台風による強風がとどめをさしたようです。1㎡あたり30~40㎏の重量がありますので高いところから落ちて来ると非常に危険ですよね。
調査棒の先端もすっぽり入るぐらいの浮き
落下していない他の箇所もすでに剥離しており、手差し棒の先が簡単に入りますし、壁をゆっくり押すとふわふわとまるでステージの緞帳のように揺れていました。
こうなると手当としては、全撤去し新たに外壁を構築するしかありません。通常外壁を解体から補修までかかる費用(解体費・足場費・下地補修費・外壁材施工費・外壁仕上費・取合補修費・塗装費・廃材処分費他)は、モルタル壁で2万/㎡~かかります。参考まで。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!