令和2年4月現在では、リフォーム工事には10年保証の義務はありませんが、リフォームだからと言って手抜きは出来ません。新築同様の品質が求められます。
地質調査
新築同様の大規模なリフォーム工事を行う場合は地質調査は欠かせません。写真はスウェーデン式サウンディング調査といって、これにより基礎の断面算定や杭工事又は地盤改良の必要の有無を調べます。
丘陵地の建つこの現場は事前インスペクションで、床下に数センチの地割れが見つかり、谷方向へ床が傾斜していました。調査の結果は直接基礎では地盤地耐力が不足かつ支持層が谷側へ傾斜していることが判った為、杭地業を行うこととなりました。
杭地業の種類
杭工事には、セメントで地盤を柱状に固め摩擦力でもたせる柱状改良杭や支持層まで直接到達させる支持杭などがあり、地盤の特性や支持層の深さなどで工法を選択します。この現場は支持層が13~15mと深かったことや、その他の理由により鋼管杭で直接指示させる方法を選択しました。基礎の主要構造線(主に土台を配置する主要な間仕切り)下に1間ピッチで施工していきます。まずは、杭芯出しです。建物位置の基準となる遣方(やりかた:主要構造通芯を出した水平貫)から杭芯を出し地盤にマーキングします。
鋼管杭準備
次に杭先端の加工をします。先端には羽根を溶接し、この羽根(外翼)で貫入し易くすると同時に羽根の約1/2までの面積が杭直径にプラスされ、先端支持面積の役割もします。杭先端を塞がないのは貫入初期の芯ずれ防止の為で、打ち終わり時点では鋼管杭内に入り込んだ土が圧縮され閉塞効果を発揮します。
鋼管杭圧入
建柱機で溶接した羽根に対し正回転を掛けながら圧入していきます。ドライバーでネジを締め付ける要領で回転圧入しますので、地盤内に転石層(事前のサウンディング調査で判明)などがある場合は事前にバックホー等重機で掘削除去しておく必要があります。転石があると簡単に杭先端がずれたり破壊されたり最悪の場合、支持層まで到達できない場合があるからです。
深い支持層までどうやって届かせる?
運搬用のトラック荷台長さや建柱機の一度に打てる杭長制限等により、鋼管杭の基準長さは8mです。ではどうやって最深15mの支持層まで届かせるのでしょう?
答えは写真の通り、途中で溶接するのです。2本合わせると8+8=16mの杭長さになりますね。一回り小径の鋼管を裏当て金にしてソケット的に突合せ溶接します。
打ち終わり
地面に約1m頭を出して(15m深さの支持層に到達)打ち終わりです。
ところで、地面のような湿気のある所に鉄を使って大丈夫?と疑問に思われた方はいませんか。勿論鉄である以上酸化により錆ますが、水中状態という最悪なケースでの腐食スピード(腐食深度という)から逆算してこの鋼管杭の肉厚が設定されています。ただ何年持つかはその施工会社の保証形態によりさまざまなので一概には言えませんが、楽に半世紀はもつようです。
基礎工事に備え柱頭処理
続いて行われる基礎工事の基礎コンクリートに定着させるため、所定の高さで杭をカットし柱頭処理を行います。写真は基礎底盤配筋の被り厚さ60にあわせてあります。
次回は基礎工事に続きます。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!