中古住宅購入で失敗しないこつの屋根編です。外観上、屋根葺き材に特に劣化が見られないからと言って油断は禁物です。以前の工法だと地震で大変なことになりますよ。
中古住宅診断重要箇所:屋根
写真は福岡西方沖地震で震度5弱の被害を受けた和瓦です。数枚毎にしか釘留めされていなかった平瓦も多少ずれていますが、棟瓦は壊滅的です。棟はのし瓦2~3段積みの上に冠瓦がのし土と銅線程度で構成されていたため、強度の割には荷重が重くまさに、地震の標的となりました。インスペクションで築年数がわかれば、おおよそ瓦下地の施工内容が判ります。
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大地震が襲ってきたら、瓦の崩落で人や物に被害を及ぼしかねません。では診断で瓦工事に問題がみつかった場合はどうすればよいか、簡単に現在の標準的な瓦工事の手順でそれをみていきましょう。
葺替えの場合、まず下地野地板や垂木の状態(強度や不陸等)を確認し、問題なければ防水シートを張ります、流れ方向重ね代は100、左右は300、谷と棟は2重張りします。
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軒先にはカラーステンレス鋼板で広小舞を覆います。これは、瓦をすり抜け防水シート伝いに流れて来た雨水によって、軒先広小舞の木部が傷まないようにする為です。この防水シートは、以前の物よりかなり改良が加えられ、標準品でもゴム化アスファルトルーフィングといって、非常に防水性・耐久性に富んでいます。軒先から水上に向かい横張りしていき、順次上に重ね代を取り、張っていきます。
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そして瓦桟には下端にスリットを設けて、伝ってきた雨水を常に水下側に逃がしてやります。
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防水シートと瓦桟が済んだら、軒先瓦から伏せていきます。軒先瓦は強風で飛び易いので、先端瓦桟にL型のステンレス留釘(白丸)と瓦桟計2ヶ所に留め(赤丸)付けます。
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2列目以降の瓦先端の浮き防止には、1列前に施工した瓦のフックに引掛け固定します。全平瓦同様に施工し、固定します。
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次は棟瓦(隅棟同様)です。写真のステンレス製金具によって棟桟を強力に固定します。
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桟木(45×45)を先程の金物に設置した状態です。しっかりとした木下地が入ることにより棟瓦のビス留固定が可能となり、棟部自体の強度が従来の番線留めに比べるとかなり増します。
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屋根の一番頭頂部には棟換気金物兼用の強力棟金物を使えば、棟瓦の強度確保と小屋裏換気の二役をこなすことができます。今回は洋風平瓦(石州丸惣のニューセラF)の例でしたが、和瓦でも同様の手順で行います。
これで、深度5弱程度のゆれで簡単に崩落していた瓦もしっかりと固定することができ、同時に台風対策にもなりました。
地震発生時、瓦の落下等で思わぬ被害を出す前に是非インスペクションで建物の健康診断を行いましょう。
既存住宅には経年劣化による不具合がつきものです。でも、購入前のインスペクションで、状況がわからないという不安を解消することは可能ですよ!