元来押入れとは、日本の旧生活様式に合わせた収納部であり、現代の生活様式では使いにくいのかもしれません。そんな押入れの活用法とは。
押入れの構成
一般的な押入れです。軽量な襖は、簡単に外せるのでご覧のようにフルオープンにもなり、旧生活様式では使い勝手の良いものでした。その構成は下から、比較的重い物をしまう下段収納~中断~枕棚の三部構成となっており、半間という奥行は日本人サイズの布団を二つ折にしたサイズで、一番出し入れのし易い中段に重ねて積み重ねる事で、最大限の収納効率が得られさらに、最上段の奥行の浅い棚は、読んで字のごとく枕を収納するのに最適な構成となっています。すなわち、主に布団を収納するのに特化したものです。
布団は消滅
ところが、生活様式の欧米化に伴い、就寝のたびに出し入れする布団は姿を消し、奥行の深い押入れの構成が現実の利用勝手にそぐわないものに。という訳で今回は、押入れの半分を小物収納に改造した例のご紹介です。
その工事手順は、小物収納に充てるサイズを決めて写真のように中段と枕棚を撤去します。一般的な押入れは先に床・壁・天井の内装材を仕上げた後に棚を取り付けているため、このように棚を取ってもその内装材には殆ど被害は生じず、そのまま内装として使えます。なお、カットした切り口部分は根太等を入れ、補強しておきます。
間仕切り設置
分割した押入れ空間を最大限活用するためには、新たに設置する間仕切壁は強度を確保しながら極力薄くする必要があります。そこで厚さ30㎜のシナランバー(表面に化粧材が張られている)という合板をよく使います。棚受け金物などが直接留め付け可能で、残った中段や枕棚の荷重にも十分耐えられる強度があります。もちろんシックハウス対策対応の安全な材料です。
可動棚
腕木式の棚受け柱を設置し、必要に応じて高さの変えられる可動棚(表面強度の強いメラミン合板厚さ18)を設置すれば完成です。人が一歩踏み込める50cm角のスペースを確保し、奥行30cmの棚をⅬ型に5段設置した例です。なお、棚受け柱を既存壁に設置する際、留付け強度が不足している場合は重ね張、さらにビス留めの際、押入れの隣室が水回り等の場合は、特に配線・配管の位置などの確認・検討を怠らない様に注意が必要です。
いかがでしたか、布団収納ありきで奥行の深い押入れも、棚の構成次第で使い勝手の良い物になります。参考までに、この工事費用は税別約8万円、工事は1日で完了しました。
既存住宅には経年劣化等による不具合がつきものですが、インスペクションによりその原因がはっきりし対策を講じることができます。