国土交通省インスペクション・ガイドライン
既存住宅現況検査の手順について
業務の依頼申し込みの受付け方や、契約に関して事前説明が必要となる事項など、検査業務に至る前段階の取り扱い方についてもガイドラインで詳しく示されています。現況検査の実施と記録、そして検査結果報告書の作成と報告についても、専用のシートが用意されており、効率的な検査手順を示すことで検査項目を漏れなく短時間に確認できるように工夫がなされています。
また、検査を行う者(検査人)に求められる資格や能力についても明記されており、彼らが公正な業務実施のために順守すべき事項についても事細かく示されています。
業務の依頼申し込み
○ インスペクション業務の依頼申込みに際して、依頼主から、依頼書と合わせて以下の事項について書面等により提出してもらうことを基本とする。
インスペクションは、依頼主の委託からスタートします。受託できる案件かどうか、また現在はどのような状況にあるのかを確認するために、対象住宅に関する資料を提出してもらう必要があります。
① 検査対象住宅の基本的な情報(所在地、構造工法、階数規模、建築時期、リフォーム等の実施状況)
インスペクション業務を実施する上で参考となる基本的な情報については、依頼申込時に依頼主から提出を受けた設計図書(新築時)、改修工事の記録(設計図書、内訳書等)、建築確認済証、完了検査済証又は特定行政庁が交付する建築確認等に係る記録を証明する書類(「建築確認記載事項証明」「確認台帳記載事項証証明」等名称は行政庁により異なる)、住宅性能評価書、建物登記簿謄本、共同住宅の場合には管理規約、長期修繕計画等の書面の写し、又はこれらの書類等が入手できない場合には、依頼主の申告等により確認し、実際に行った確認方法とあわせて記録します。
中古住宅は、これらの設計図書や証明書類等が入手できない場合も多いのですが、それらが無いからと言ってインスペクションができないわけではありません。
② 依頼主と住宅所有者や居住者が異なる場合、現況検査を実施することに対する 住宅所有者及び居住者の承諾
住宅所有者等の承諾は、依頼者に取り付けてもらい、依頼申込時の申告により確認することになっています。承諾が得られていない場合には、事前の承諾取り付けが必要であることを説明しなければなりません。これらは依頼主が責任をもって準備すべき事柄なのです。
また、分譲マンションに係る現況検査の場合には、管理に関する事項を規約に定めることが可能であることから、現況検査の実施や部外者の立ち入りについて管理規約等において制限が定められていないか、依頼主に確認してもらわなければなりません。管理組合の承諾を必要とする分譲マンションの場合には、住宅所有者等だけでなく管理組合の承諾も取り付ける必要があるのです。
③ 現況検査を実施する際の立会人(売主、仲介業者等)の氏名・連絡先等
現況検査を行う際、依頼主以外に立会人が存在する場合は、その立会人の氏名・連絡先・立場等を確認する必要があります。
業務受託時の契約内容等に関する説明
○ インスペクション業務を受託しようとする際には、準委任契約に係る債務不履行により損害賠償責任を負うことが考えられることも踏まえ、次に掲げる事項を書面等により説明し、依頼主が説明の内容を確認したことについて書面等により確認することを基本とする。
検査事業者は、依頼主との準委任契約に基づき善良なる管理者としての注意をもってインスペクション業務を遂行する義務を負うとともに、検査結果が誤っていた場合には、依頼主との間の準委任契約に係る債務不履行により損害賠償責任を負うことが考えられます。そうした場合、依頼主から検査ミスではないかと指摘されるものの中には、現況検査における契約上の検査対象箇所・範囲の認識違いといったケースも想定されることから、業務受託時における依頼主への契約内容や留意事項等に関する適切な説明が強く求められているのです。
① 契約において一般的に必要と考えられる事項(検査事業者の名称、所在地、代表者、許認可等の有無、料金及び支払時期、契約の解除に関する事項等)
検査事業者は、契約において一般的に必要と考えられる事項を書面に明記し、依頼主に説明しなければなりません。説明した結果、依頼主が説明内容を理解したことを確認する必要もあります。
② 業務内容に関する事項
・ 現況検査の実施方法、検査対象とする箇所・部位及び劣化事象等
・ 附随的に実施する業務がある場合には当該附随して実施する業務の内容
・ 外部委託する業務がある場合には当該外部委託する業務と委託先
検査事業者は、現況検査の実施方法や、検査対象となる部位および劣化事象の捉え方について書面に明記し、依頼主に説明しなければなりません。また、付随的に実施する業務に関することや、外部委託に関することについても、当該業務があれば、書面にして説明を尽くし、依頼主の理解を確認します。
なお、外部委託する業務としては、依頼主の意向等に応じて実施する白アリ検査や非破壊検査機器を用いた検査などの検査業務の一部について、専門事業者に委託することが考えられます。
③ 検査業務を実施する者(検査人)に関する事項
・ 氏名及び保有する国家資格の名称・免許等番号
・ 実務経験、講習受講歴
検査事業者は、検査業務を実施する検査人に関する事項について、書面に明記し説明をします。保有資格や実務経験により、その検査人の検査業務に対する能力や実績を依頼主にわかってもらうためです。
④ 検査業務に係る留意事項
・ インスペクション業務を実施するに当たって、依頼主が住宅所有者と異なる場合には住宅に立ち入って検査を行うことについて、住宅所有者や居住者の承諾が必要であり、承諾が得られない場合には現況検査を実施できないこと
・ 住宅の建て方(隣家等との距離)、床下・小屋裏点検口がない場合、容易に移動させられない家具等がある場合や積雪時など検査対象住宅の状況によっては、検査対象である箇所についても検査を実施できない可能性があること
検査業務に係る留意事項について、書面に明記し事前に説明します。ガイドラインに規定された検査項目のすべてを実施することが困難な場合もありますから、そのような事態になった場合の対処法についても明記しておきます。
⑤ 中立性に関する情報
・ 宅地建物取引業や建設業・リフォーム業等を実施している場合にはその旨、更に当該検査対象住宅についてこれらの業務を受託している場合にはその旨
・ 対象住宅の売主、媒介する宅建業者又はリフォーム工事を請け負う建設業者等との資本関係がある場合はその旨
検査業務は中立性を保つ必要があります。対象となる住宅の売買取引に関与している場合や、リフォーム工事を受注する目的を持って検査業務に臨む場合などについては、立場を明らかにした上で、中立性の確保に努める必要があります。
⑥ 検査結果に係る留意事項
・ 瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものではないこと
・ 報告書の記載内容について、検査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものではないこと。
・ 建築基準関係法令等への適合性を判定するものではないこと
・ 報告書の複製等に関する制限や第三者が利用する場合の取扱に関すること
検査業務の目的は、対象となる住宅の、現在の状況について調査し報告することにあります。それ以外の目的に検査結果を利用することはできませんし、検査人が何ら保証するものではないということをきちんをお知らせする必要があります。
現況検査の実施・記録
○ 現況検査の実施時における検査人の本人確認を可能とするため、検査事業者がその検査人であることを証する書面を携行する。
宅建業法で定められたインスペクションの検査人は「既存住宅状況調査技術者」という資格を保有しています。この資格を付与された検査人は、講習の実施機関が発行する技術者証を有し、また、実施機関のホームページ上に検査人として情報開示されています。検査の依頼主がいつでも確認できるように、 検査事業者が発行する社員証とあわせて、技術者証を携行することが望ましいでしょう。
○ 現況検査の実施状況として、以下の事項を記録する。
検査人は、現況検査の実施状況について、正しく記録することが義務付けられています。
① 検査事業者の名称等、検査を行った検査人の氏名(資格を有する場合は資格名称と免許等の番号)
現況検査を実施した検査人の所属や立場、資格等(保有する資格名称や免許等の番号)について記録を残します。
② 検査の立会人がある場合はその氏名
現況検査において売主や仲介業者等の立会があった場合、当該立会人を現況検査の内容として記録することが基本とされています。なお、報告書への立会人の記載については、当該立会人にその可否を確認して、報告書に記載することが必要だと考えられます。
③ 検査実施日時、所要時間及び天候
検査実施日時、所要時間及び天候についても、正確に記録を残す必要があります。
○ 現況検査においては、チェックリストや写真等を活用して、実施した検査内容を記録する。
既定のチェックリストを使用し、また必要に応じて写真を撮影し、実施した検査内容について記録します。
① 検査対象項目について、箇所・部位別と検査対象の劣化事象等からなるチェックリスト等を用いて、確認すべき劣化事象等が認められたか否かを記録する。
既定のチェックリストに沿って、効率的に検査対象項目について劣化事象の有無を確認し、記録します。
② 隣家等との接近、床下・小屋裏点検口が存在しない、容易に移動させられない家具等が存在するといった住宅の状況等により現況検査できなかった箇所は、その箇所と理由を記録する。部分的にしか検査できなかった箇所についても同様とし、さらに検査できたおおよその割合を記録する。
検査記録を残しておく観点からは、部分的にしか検査できなかった箇所や指摘すべき劣化事象等には該当しないものの一定の劣化事象等が認められた箇所についても写真により記録しておくことが望ましいと言われています。また、部分的にしか検査できなかった場合は、その箇所を記録し、更に検査できたおおよその割合を記録する必要があります。
③ 劣化事象等を指摘する箇所、現況検査できなかった箇所については、その状態や状況が分かるように撮影した写真により記録する。
報告書を作成する観点からも、劣化事象等を指摘する箇所及び現況検査できなかった箇所については、その状態
や状況が分かるように写真を撮影し、記録に残しておきます。
検査結果報告書の作成・報告
○ 検査結果等は書面による報告書として依頼主に報告(提出)する。
前述のとおり、検査結果が誤っていた場合には、依頼主との間の準委任契約に係る債務不履行により損害賠償責任を負う可能性が考えられます。依頼主から検査ミスではないかと指摘されるものの中には、住宅の状況等により検査人が調査・検査できなかった箇所についての報告が不十分といったケースも想定されることから、報告書における検査結果の適切な報告が求められているのです。
検査業務を委託された以上、検査を実施し報告することは当たり前のことですが、無用な責任問題を引き起こすことのないよう、適切な事前説明と報告が非常に重要なのです。
○ 検査結果報告書としては、次に掲げる内容を記載する。
検査人は、現況検査の記録を元に、検査結果報告書を作成します。 報告書に記載すべき項目や内容についても、このガイドラインに定められています。
① 検査業務の実施概要
・ 検査事業者の名称等、検査を行った検査人の氏名(資格を有する場合は資格 名称と免許等の番号)
・ 検査実施日時、所要時間及び天候
報告書には、検査人の情報及び検査実施日の状況について、正しく記載します。
② 検査対象住宅の概要
・ 検査対象住宅の所在地、構造・階数・規模、建築時期、住宅の工法とこれらの確認方法
・ 関連図書等の有無に関する確認結果と確認方法(不明な場合や住宅所有者等の協力が得られない場合はその旨を記載)
依頼人から事前に提出された建築当時の図面や、補足的に依頼人から聞き取り確認した内容を元に、検査対象住宅の所在地、構造・階数・規模、建築時期、住宅の工法などについて報告書に記載します。また、関連図書等の有無に関する確認結果と確認方法(不明な場合や住宅所有者等の協力が得られない場合はその旨)も合わせて記載します。
③ 現況検査の結果
・ 検査した部位と確認すべき劣化事象等の検査結果(写真を含む)
・ 対象住宅の状況により検査できなかった部位については、当該箇所とその理由及び写真
・ 部分的にしか検査できなかった部位についても同様とし、検査できた割合をあわせて記載
検査実施日に記録した資料を基に、検査した部位と確認すべき劣化事象等の検査結果(写真を含む)、 対象住宅の状況により検査できなかった部位については当該箇所とその理由(及び写真)、部分的にしか検査できなかった部位についても同様に報告書に記載し、検査できた割合もあわせて記載します。
○ 検査結果に係る留意事項
一時的なインスペクションにおける検査対象項目は限られており、場合によっては、依頼主が期待する検査結果とは異なる報告内容である可能性もあります。事前説明で詳しく説明を尽くし、理解してもらった上で受託するのは勿論、報告書においても、その目的や検査対象を明らかにし、それ以外のものについては対象外であることを明記する必要があります。
① 瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものではないこと
一時的なインスペクションである現況検査は、瑕疵の有無を判定するものではなく、瑕疵がないことを保証するものでもないことを報告書に明記します。
② 報告書の記載内容について、検査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものではないこと
一時的なインスペクションである現況検査は、現状について検査することが目的であり、報告書の記載内容について、検査時点からの時間経過による変化がないことを保証するものではないことを明記します。
③ 建築基準関係法令等への適合性を判定するものではないこと
また、建築基準関係法令等への適合性を判定するものではないことも明記します。
④ 報告書の複製等に関する制限や第三者が利用する場合の取扱いに関すること
報告書は依頼主に提出すべきものであり、依頼主の許可なく複製等を行うことは許されません。第三者が利用する場合の取り扱いについても注意喚起が必要です。
検査人について
○ 実際に現場で検査を行う者には、住宅の建築や劣化・不具合等に関する知識、検査の実施方法や判定に関する知識と経験が求められる。この場合、住宅の建築に関する一定の資格を有していることや実務経験を有していることは必要な能力を有しているかどうかの一つの目安になると考えられる。
消費者等の検査事業者選択の参考とするため、また、検査業務の依頼主に対しても、保有する資格や講習の受講歴等に関する情報を提供することが求められます。
① 住宅の生産過程(施工)に関わる国家資格と実務経験を一定程度有していると考えられるものの組合せとしては次のものが挙げられる。
・ 建築士 ………………… 住宅の設計、工事監理
・ 建築施工管理技士 …… 住宅の工事管理
建築士(一級、二級、木造)及び建築施工管理技士は、住宅の設計・施工の全般に直接かかわる国家資格です。実務経験年数や手掛けた物件により、ある一定の知識や能力を有する検査人として認められます。
② 検査の具体的方法に関する知識や劣化事象等への該当性を確認する能力等の習得に資する実務経験と考えられるものの例としては次のものが挙げられる。
(例)
・既存住宅の住宅性能評価における現況検査
・既存住宅売買瑕疵保険における現況検査
・フラット35(中古住宅)に係る適合証明業務
・共同住宅に係る建築基準法に基づく定期点検・報告に係る業務
・住宅のアフターサービス等としての定期的な点検
・ 住宅リフォーム工事の施工(事前調査を伴うもの)
これらの資格や業務は、その目的だけに特化したものであり、国家資格ではありません。が、住宅の現況を見極めるという検査の主旨は同じですから、講習会への参加や実務経験を積むことで、知識や能力を有する検査人として期待されています。
○ また、適切な業務実施のため講習等の受講により必要な知識・経験等を補うことが必要であると考えられる。その際、必要な知識等の習得状況を確認するため修了考査等を行うことが求められる。(講習内容の例)
① 住宅の構造、防水、設備に関する工法・仕様等に関すること
② 劣化事象等とするか否かの判定に関すること
③ 現況検査の具体的な実施方法に関すること
④ 報告書の作成及び報告方法に関すること
⑤ 公正な業務の実施上必要となる情報開示や説明上の留意点に関すること
⑥ 関係法令に関すること 等
関連団体等により、必要な知識等の習得状況を確認するため修了考査等を行う講習等を実施し、あわせて受講者の受講履歴等に関する情報を提供する取組を行うことが考えられています。
○ さらに、検査に関する実務経験を有していない者については、講習の受講のみならず、自身が検査人となる前に経験豊富な検査人の現況検査に同行するなどの実地訓練を行うことが重要であると考えられる。
検査は複数人で行うことが望ましいと考えられます。実務経験を有していない者を教育する場としても、実地訓練は重要です。有能な検査人を増やすために、講習の受講のみならず実務で学ぶ姿勢が大切です。
公正な業務実施のために遵守すべき事項
○ 関係法令の遵守
検査業務を実施する者は、関係法令を遵守することが義務付けられています。
○ 客観性・中立性の確保
検査業務を実施する者は、客観性・中立性を常に確保することが義務付けられています。
① 客観的、誠実に取り組み、公正なインスペクション業務の実施に努めること。
検査事業者や検査事業者等の団体における行動基準や倫理規定等として制定し、公正な業務の実施に努めることが求められています。 依頼主や立会人に忖度するようなことがあってはなりません。検査人としてやるべきことだけに集中し、業務実施に努めます。
② 検査結果の報告に当たっては客観的な報告に努め、事実と相違する内容の報告を行わないこと。また、リフォーム工事費の目安等に関する情報を提供する場合には、検査結果の報告書とは別であることを明らかにすること。
報告についても客観性に徹し、事実と相違する内容の記述や、私見を交えた見解を示すべきではありません。
検査結果によっては、詳細な調査の実施が必要となったり、改修工事等が必要となったりする場合も想定されます。こうした場合、詳細な調査の概要や費用の目安、改修工事等の方法や費用の目安等に関する情報を、参考情報として提供することが考えられますが、これらについては検査結果報告書の内容とは別であることを明らかにして行うことが求められます。
③ 宅地建物取引業又は建設業若しくはリフォーム業を営んでいる場合は、その旨を明らかにすること。
検査事業者が、宅建業者あるいはリフォーム業者である場合は、検査結果を基にそれらの業務契約に関する勧誘等が行われるのは自然なことです。が、それらの行為は検査業務とは別のものですから、事前にそのような立場にあることを説明する必要があります。
④ インスペクション業務を受託しようとする住宅において、媒介業務やリフォー ム工事を受託している又は受託しようとしている場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること。
検査事業者が宅建業者やリフォーム業者である場合、それらの業務契約の締結に関する勧誘等は、宅建業者あるいはリフォーム業者として行うものであることを説明する必要があります。検査事業者として行う検査結果の報告等の検査業務とは別であることを、はっきりさせるためです。
⑤ 対象住宅の売主、媒介する宅地建物取引業者又はリフォーム工事を請け負う建設業者等との資本関係がある場合は、依頼主に対してその旨を明らかにするこ と。
資本関係があるということは、それらの事業者と深いつながりがあるということです。検査業務は客観的に行うことが義務付けられていますので当然そのように行うとしても、依頼主が不信に思う種にもなりかねませんので、その事実を明らかにするということは大変重要なことです。
⑥ 自らが売主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないこと。
対象住宅の売主となる場合は、どうしてもインスペクションの客観性を保つことが難しいと考えられるため、他の検査事業者に検査を依頼することとされています。
⑦ 複数の者から同時に同一の住宅についてインスペクション業務を受託する場合には依頼主の承諾を得ることとし、依頼主の承諾なく依頼主以外の者からインスペクション業務に係る報酬を受け取らないこと。
複数の者から同時に同一の住宅についてインスペクションを依頼されるケースはまずないと思います。誰にとって必要なインスペクションなのかを考えれば、目的の違う複数人から同時に受託するべきではないからです。
⑧ 住宅の流通、リフォーム等に関わる事業者から、インスペクション業務の実施に関し、謝礼等の金銭的利益の提供や中立性を損なうおそれのある便宜的供与を受けないこと。
インスペクション業務は、客観的で公正で、独立性の高い業務であるべきです。それを維持するためにも、対象住宅に関係する他業者等から、謝礼等の金銭的利益の提供や中立性を損なうおそれのある便宜的供与を受けてはいけません。
⑨ インスペクション業務の実施に関し、依頼主の紹介や依頼主への推薦等を受けたことに対する謝礼等を提供しないこと。
不動産業界には昔から、紹介料という名目で謝礼等を要求する文化があるようです。依頼する側からしてみれば、そのような行為は結託以外の何物でもありません。公正中立なインスペクション業務を保つためにも、そのような行為は厳に慎むべきですし、決して応じてはならないのです。
⑩ 住宅の売買契約やリフォーム工事の請負契約を締結しない旨の意思を表示した者に対して、これらの契約の締結について勧誘しないこと。
依頼主が、対象住宅の売買契約やリフォーム工事の請負契約を締結しないと決断したなら、それ以上の勧誘はしてはいけないことになっています。
○ 広告・勧誘の適正化
虚偽・誇大な広告を行ったり、依頼主に誤解させ、又は誤解を与えるような勧誘を行ったりしてはいけません。
○ 守秘義務
検査結果及び依頼主に関する情報を、依頼主の承諾なく情報提供や公開をしてはなりません。
情報の開示等に関すること
消費者による検査事業者の選択、検査業務の依頼を可能とするため、業務受託時における契約内容等の説明に加え、消費者等が委託先を探す時点において開示が求められる情報を、ホームページ等により開示することが求められています。
○ 事業者の基本情報
・ 事業者の所在地、代表者、連絡先、資本金の額
・ 免許等に関する事項(建築士事務所登録、建設業許可の種類と番号、宅地建物 取引業免許の番号等) ○ 業務内容に関する事項
・ 検査項目、検査方法及び検査結果報告の概要
・ 外部委託する業務がある場合には当該外部委託する業務
・ 料金体系
○ 所属する検査人に関する事項
・ 検査を実施する者の資格等に関する事項(所属する者が保有する国家資格の名称とその資格者数)
○ 兼業の状況に関する事項
・ 検査業務以外に実施している業務(兼業)の内容(宅地建物取引業、建設業、 リフォーム業等)
○ 検査業務に係る留意事項
・ 検査業務の制約・留意事項
・ 報告書の取扱、検査結果に関する留意事項
○ その他
・ 附随的に提供する業務等の概要
検査事業者による更なる積極的な情報開示の取組として、検査人に関する情報 (氏名、保有資格、実務経験や講習受講歴等)をホームページ等において開示することも考えられています。
以上、最後まで目を通していただき、ありがとうございます。
私たち検査事業者は、ガイドラインに沿った正しいインスペクション業務に従事することを強く求められています。それは、これからの中古住宅流通市場を安全で安心できるものにするためなのです。